〜地域に愛を注ぎ、声に耳を澄ませる“体感型まちづくり”のリアル〜
❖ イベントダイジェスト
伊吹さん(株式会社RFC代表取締役)が主催する「THE HuB-酒と学びとつながりと-」にて開催された本イベント。ゲストには、豊中市南部地域を舞台に、まちづくりに本気で取り組む橋本慶さんをお迎えしました。当日は伊吹さんと、大阪音楽大学の梶矢さんがファシリテーターを務め、会場は和やかで温かい雰囲気に。行政の枠を越えて地域とつながる橋本さんのリアルな言葉が、参加者一人ひとりの心に深く届く時間となりました。

❖ 地域との関わりは突然に
橋本さんが地域に関わるようになったのは、実はかなり突然のことでした。
それまで28年間、水道局の土木職として働いていた橋本さん。
2019年、構造改革により新設された「創造改革課で南部地域活性化担当主幹」という役職に大抜擢されたのです。
「そのとき、はじめてスーツ買いました(笑)」
❖ 話を聞くことから、すべてが始まる
まず取り組んだのは、“話を聞くこと”。
でも、行政が開く説明会に人は集まってくれません。ならば自分が行くしかない、と、橋本さんは町内のイベントを全調査。あらゆる催しに顔を出し、まちの人たちの「リアルな声」に耳を傾けました。
「地域で会って、地域で話して、地域で飲む。それが一番リアルやと思うんです」
人と出会うことで、まちの見え方が変わる。その積み重ねが、まちを動かす第一歩になっていました。

❖ 公園にキッチンカー?小さな挑戦がつながりを生む
コロナ禍で地域活動が止まり、日常生活も一変したとき橋本さんが動いたのは、近くに飲食店がない公園にキッチンカーを置くという“社会実験”。
「コロナ禍でもできることを」と考え、飲食店のテイクアウト支援としての応援サイトの立ち上げや飲食店応援のためのTシャツ作成など今できることに対して色々と取り組みました。
行政内では不安の声も多かったそうですが、「やってみたらええやん精神」で突き進んだ橋本さん。
こうした柔軟なアクションが、地域の飲食店との信頼関係を築いていくきっかけになっていきます。
❖ “本物”があるから、体験できるまちにしたい
豊中市南部地域には、実は「音楽・食・スポーツ・ものづくり」といった多彩な地場文化があります。
橋本さんは、それらを“体験”として提供できる仕組みが必要だと感じていました。
「あるけど見えていない“本物”を、もっと地域の中で体感できるようにしたい」
その思いから、駅前での音楽イベントや、ストリートスケートの社会実験へとつながっていきます。
豊南市場内にスケートボードパークを設置し、世界的プレイヤーが子どもたちにレッスンする機会も生まれたり、庄内
駅前でストリートミュージックができるような機会を作るなど様々な場所を生み出しています。

❖ 「酔いどれ祭り」から始まる、まちの熱量
まちの人々の想いをかけ合わせて生まれたのが、「酔いどれ祭り」。
音楽フェスと盆踊りのハイブリッドイベントとして、2022年にグリーンスポーツセンターで開催しました。
地域の大人たちが提灯に名入れで資金を出したり、学生や若手がTシャツ作成に関わったり…
行政ではなく“まちの人たち”が主役になれる場をつくったことで、大きなうねりとつながりが生まれました。
❖ 広がる“関わりしろ”、ショコラという実験場
橋本さんが現在拠点にしているのが、公共施設を複合化した「庄内コラボセンターショコラ」。
公共施設の再編と地域活性化拠点として誕生したショコラは図書館や公民館に加え、子育て、高齢者支援拠点や市民活動の場も融合。
大阪音楽大学の学生が中心となりヤギを飼育したり、イベントを主催したりと、ここでは日々、地域と個人が交わる“小さな挑戦”が生まれています。
❖ 地域創生塾、つながる人がまちを耕す
まちの“関わりしろ”を広げる取り組みとして、橋本さんが塾長を務める「地域創生塾」。
高校生や大学生、大人たちが一緒になって、まちのことを考え、やってみる場所。
「人口を増やすよりも、このまちに関わってくれる人を増やす方が大事」
この価値観が、塾の根っこにはあります。
❖ “成果より納得”が、人の心を動かす
橋本さんが話してくれた印象的な言葉のひとつが、「正解より納得が大事」というもの。
行政という立場で、結果を出すことを求められる中、それでも“人の気持ち”を置いてきぼりにしない。
「仕事には夢を、地域には愛を」
そんな橋本さんのスタンスが、まちに関わる人たちの心を動かし続けています。

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